少し長くなります。興味のある方はどうぞ。
現在、大学院進学準備をする段階で志望書を
作成している。その中で自分の興味を整理して、なぜ
自分は都市・地域計画のプログラムに入りたいのか、
そして、農業経済学という一見畑違いの分野から
何故そのような転向をしようと思っているのかを
洗い出している。
これと平行して、どうにか卒論で農業経済と都市計画
がオーバーラップしている部分を書けないかと模索
してきた。前から出ている一つの結論として、土地利用
に関することなら大いに重複部分があるだろうと思って
いた。単純に考えて土地を利用するにあたって人が手を
加える部分だけに注目すると、それを市街地(都市)
として利用するのか非市街地(主に農地)として利用する
のか、という大別ができ、都市計画を行なう際はその
境界線をどこに置くか、どのような用途にのみ使用して
いいか、などの規制がらみで必ず農業生産・農地との
関わりがが出てくるからだ。
と思っていた矢先に叔父から紹介された一冊の本を
きっかけにまさに自分で考えていたことが克明に記されて
いる本に出会った。最初に紹介された本が(たしか)
先週くらいに出版された新書で、「本質を見抜く力
ー環境、食糧、エネルギー」という本。
養老猛と元河川局長の竹村さんという人の対談集。
両著者の意見も面白いが、特別対談で5章に登場する
農業経済学者の神門(ごうど)先生という方の意見が最も
面白かった。
この方、農業経済を真面目に勉強していれば当然
名前くらい聞いたことはあるはずな有名な方らしいが、
恥ずかしながら学問に関して浮気性(というか単に真面目に
農経の勉強をしてこなかっただけ)な僕は初めて知りました。
うちの指導教官に名前を言うと、そのリアクションだけで
彼が"業界"でどういうポジションにいるか分かるほど、
日本農政・農業に関わる問題に関して同業者(研究者)
や市民の無関心や無知を批判している、所謂"異端児"らしい。
もちろんJAや行政の批判もしているが、何か問題が起る度に
具体的な方策は考えずに官僚批判を展開して終わってしまう
市民と研究者の無責任さを言及し、"お任せ民主主義"だと
して非難する。
まあそれはいいとして、肝心なのはその内容。
この本ではちょこっと述べているだけだったので、
もっと詳しい内容を、同氏の「日本の食と農」と言う本で
読んだ。ちょっとそこから抜粋して述べたいと思う。
色々と彼は言っていますが、僕が一番興味を持ったのは、
現在日本の農業界に蔓延る農地転用問題。
土地が少なく、主作物が米である日本においては、
優良農地が「平坦、日照条件がよい、区画が
整っている、道路に近い」と定義されるが、これが
ショッピングセンターなどの商業施設や宅地用の土地の
優良条件とばっちり合致することから、優良農地ほど転用
の際に高値をつけるポテンシャルが高い、といえる
背景がまず存在する。
これと同時に、現在日本では離農や片手間農家が増えており、
本来ならば機械化が進んできた日本にとってはこういった農地を
集約して、大規模農地にすることによって生産効率をあげる
ことが食料自給率の向上等の諸問題の解決には欠かせない。
しかし、前述の転用によって入るキャピタル・ゲインによって
一攫千金を狙う資産目的の農地保有が常習化しており、ひどい場合は
耕作放棄をしてまでも農地を手放さない農家が存在すると筆者は言う。
それに対して対策を打つべき行政も、政治家がそういった農家を
支持基盤にしている背景も考慮して実質黙認している状況がある。
これは経済学的には、「最も農業生産に長けている者に最も優良
な農地が集まる」という市場原理からかけ離れた結果になっていて、
非効率を生んでいる。
ではそもそも転用を規制するような措置をとっていれば、その
ようなスペキュレーションに基づいた農地保有が解消されるじゃないか、
というのは当然な指摘だが、そこの部分についても転用規制が"ザル"
状態で、地方自治体に設けられている農業委員会の一任で実質は
決まってしまう傾向にあるそうだ。更には、土地利用に関する法律
も、都市計画法で定められた市街化調整区域があるが、農地法
によっても規定されており、それぞれ国交省、農水省、と管轄が別な
ために、土地用途やそこを転用する際の手続きが極めて複雑らしい。
この解決策としては、アメリカ等欧米諸国が実施している
土地計画関係の法律の一本化と、その規制内容等を利害関係の
ある者だけでは決めないで市民参加の手法の導入が最も適している、
という風にかなり都市計画の重要性を指摘する結論に至っている。
しかも、自分の中で描いていたものと似た結論が出ている
ことに嬉しくなった。
というのも、そもそも都市計画に興味を持ちだしたのは二年連続
働いたポートランドで、行政の全ての仕事(もちろん都市計画を含む)
に市民参加が導入されていて、その町に住む人がその町の方向性を
みんなで決めていく、というやり方に非常に共感し、同時にそれが
最も健全だと思ったからだ。
ポートランドで学んだこと、夏の仕事の研修で常にテーマに
してきた市民参加のこと、大学で学んできた農業経済、これから
専門にしていきたい都市計画、すべてが輪になってつながった
ような気分だった。
長くなりましたが、このような日本の背景を問題意識に、ポートランド
の成功例をからめた卒論の展開にしていこうと思っています。
少し希望がわいてきた。
長く、しかもややこしい(一気に書いたので文章が意味不明かも、
指摘してください)内容を読んでいただいてありがとうございます。。
雨の小道
7 年前
4 件のコメント:
自分の関心興味にヒットする人を見つけたら、とりあえずその人の著作は全部読んでみることを薦めます!
ほいからね。細かいようだが、いろんなことが輪になってつながった感覚に陥った、と書いているが、陥る、というのは否定的な表現であって、たとえば錯覚に陥る、混乱に陥る、といった場合に用いるべきではないかな。君に起きたことは、決して否定すべき錯覚ではなく、大事な発見、気づきの感覚なのだから、別の動詞を使うべきだと思う。
アドバイスありがとうございます。
言葉の表現も考えて変えておきます。
さすがuさんの親父だね。
文章チェックまでは、できなかった。。
でも最近ウチは自分の作文が日に日に読みにくくなってるような気がして、uさんの文章は読みやすいから羨ましいよ。
これまで読みたくても読めない本のために、積読リストというのを作ってきたんだけど、『日本の食と農』はなぜかリスト入りしていました。
いつか読めるかしら。。。。
>elhiさん
elhiさんの文は読みやすいと
思いますが・・・
この本は面白いと思いますよ。
サントリー学芸賞受賞の本は
評判がいいみたいですね。
コメントを投稿