2011/02/06

60周年記念Galaとシンポジウム

写真の見栄えがいいから、という単純な理由で背景色を黒にしてみました。


この1週間は我がSCARPにとっては結構慌ただしい1週間だった。

まず木曜日夜に行われた学部創立60周年記念Gala(祝賀会)。
ダウンタウンのフォー・シーンズ・ホテルにおよそ300-400人の卒業生・関係者が集まった。



SCARPの歴史を簡単に紹介しておくと、創立は1951年。カナダで初の都市計画学部。
創立者は故Peter Oberlanderという人で、カナダ人として初めてハーバード(北米初の都市計画学部)で
都市計画の学位を取得した人物。
のちのち国連人間居住計画へのカナダ代表として活躍した。奥さんのCorneliaも実は
造園家として超有名で、Peterと同じくカナダ勲章受賞者だ。現在もお元気で、今回のGalaにも出席していた。

うちの学部は決して卒業生ネットワークが強固とは言えないので、正直あまり
卒業生の実態については知らなかった。しかし改めて聞いていると、バンクーバー周辺の
プランナー(都市計画屋さん)はほとんどうちの卒業生。司会を務めた人の最初の一言で
「これは言うべきかどうか分からないんだけど、正直言って、SCARPの卒業生が一度に
同じ場所に集まるのはどうかと思うんだよね。だって、今でかい地震が来てみんな
死んじゃったら、バンクーバーにプランナーがいなくなっちゃうよ」と言い、笑いを誘っていた。
でもあながち冗談でもないかも。

バンクーバーは長年『世界一住み易い街』と呼ばれてきた(僕はそもそもランキング
にあまり意味がないと思っている。よほど酷い場所を除けば「住めば都」主義です。)
が、その根拠ともなっている整然とした都市計画は、主にLarry BeasleyとAnn McAfee
という2人の都市計画局長の功績だと言われている。この2人ももちろんうちの卒業生。
2人は2007年に都市計画の分野で最も権威のあるケビン・リンチ賞(MITが毎年発表)を
受賞している。今学期Larry Beasleyの授業を受講してますが、確かにとてもカリスマ的な人。
現在はリタイアして、アラブ首長国連邦アブダビの都市計画アドバイザーをはじめ、
オランダのロッテルダム、テキサス州のダラスなどで国際的に活躍する著名プランナーです。

こういうGalaにありがちですが、いかに卒業生が活躍しているか、という褒め殺し大会という感じでした。


翌日の金曜日は朝から学生主催のシンポジウム。一昨年から始まり、今年が第三回。
今年はキーノートスピーカーとしてハーバード大学のSusan Fainstein教授を招待した。




彼女の最近の著書"The Just City"を題材に都市計画が社会的公正を実現するためにはどうすればよいか、みたいな話をしてくれた。

近代都市計画の歴史は「権威主義的都市計画」と「市民参加的/民主的都市計画」という
2つの対立概念の戦いの歴史とも言える。前者は19世紀のパリ改造で知られるオスマン、ニューヨークのモーゼス
のように理論や専門家の手によって一方的に行なわれる『都市計画』。
対して後者は草の根的で、コミュニティや住民主導の『まちづくり』。Jane Jacobsが特に有名。
これは少し言い換えてみれば前者はどちらかというと「結果重視」、後者はどちらかというと「プロセス重視」とも言える。
前者は社会的公正を実現するためには多少強引でも専門家が理論に基づいて行なう政策
や計画が重要だと主張し、後者は計画段階でいかに多くの市民を巻き込むかが社会的公正を担保する、と主張する。

Susan Fainsteinの主な論点は近代都市計画への過剰批判が「反都市計画主義」の
ような状況を作っていて、結果的にプランナーが聞き役に回り過ぎている、というもの
だった。プランナーはもっと積極的に「正義論」を持ち、社会的公正の実現に関るべきじゃないかっていう話。
その根拠として、市民参加というプロセスは市民同士のパワーダイナミックスに対して
ナイーブすぎる、という点を主張している。公正と思われている市民参加というプロセス
は多くの場合政治的権力を持つ者や直接利害が絡む人の思惑によって不公正な結果を
もたらすことが多いからだ。

でもこれって都市計画っていう分野に限らず政治学の永遠のテーマ。
民主主義っていう制度は情報の非対称性が少なく、十分に教育を受けた市民が
全員投票に行けば理論上うまくいくものかもしれないけど、実際はそんなはずがない。

今回のシンポジウムのテーマは"Justice"だったが、どのパネルでも答えがなく終わりのない議論を延々とした1日でした。
びっくりしたのが、なんとJane Jacobsの息子がバンクーバー在住の市民アクティビストで、
今回のシンポジウムに来ていたこと。「あ、そういえば僕息子です」ってサラリと言った
のでびっくりしましたよ。知ってる人は当然知ってましたが。この辺じゃ有名人みたい。


あまり意識してなかったけど、そういえば日本でもマイケル・サンデルの『Justice』が
去年大流行だった。リーマン・ショック後色々明らかにされたアメリカのinjustice
(サブプライムが低所得者層を食い物にしていたかと思えば、倒産間際の大企業CEOへ
破格のボーナスが支払われるなど)等がきっかけで社会全体のjusticeへの関心が高まっていることの表れなのかな。

シンポジウム中は現在エジプトをはじめとする中東地域で起こっている民主革命の話題も
色々なところで話題に上りました。

3 件のコメント:

QD さんのコメント...

映画の一場面みたい。

トム・ハンクス主演・・

yk さんのコメント...

近日公開。
前売り券絶賛好評発売中。

QD さんのコメント...

冬季五輪の街を舞台に

空前のスケールで描く

話題の超感動大作

そのタイトルは・・

「プラニング・・」w(☆o◎)w