我がSCARPが入る建物は、施設の充実度という意味ではUBCの中で最下位レベルに
ランクインすると思う。学生の間では通称「モーテル」とか「プレハブ小屋」などと
呼ばれている。60年前に学科が設立されて以降、ずっと「暫定的な」建物から動いていない。
学部時代の農学部の建物もかなり古かった(在学中に改修されたが)けど、あれはあれで
歴史的建造物として価値があるものだったが、現在の建物は「カッコワルい」古さなのだ。
これではさすがにちょっといかん!ということで昨年から本格的に新しい施設を
建設するプロジェクトが始動した。新しい建物には都市計画と分野的に非常に近い
建築・造園学科(SALA)も一緒に入ることになる。今まで交流が無かったが、実際の
仕事現場では関わりの多い分野同士だから、学生時代からお互いがどういうことを
やっているのかを知る価値は十分ある。
今日は、夕方からこの建物をデザインする建築ファームのコンペ・プレゼンのような
ものに行ってきた。数多くの候補者から既に4チームに絞ってあり、今日はそのうち2チームが
構想を発表し、それを学生と教授陣が評価する。(といっても最終決定権は専門の委員会にある)
残りの2チームは来週の木曜日に同じようにプレゼンをすることになっている。
予想以上に学生からの関心が高く、建築・造園・都市計画合わせて優に200人くらいは
見に来ていた。プレゼン会場から溢れ出た人達(自分含む)は別室でライブ中継映像を
見させられたほどだった。
2チームとも国際的に名の知れたチームで、チーム構成的には建築ファームとランドスケープ
アーキテクチャファーム(造園)が1社ずつ入るセットになっていることが多い。
大体どのチームも過去の作品の自慢大会になるので、色々な綺麗な建物を見ることが出来る。
ニューヨークタイムズビル(レンツォ・ピアノのデザイン)の造園をしたとことか、
イエール大学の新しい環境スクールのゼロ・エミッションビルを建てたファームとか、
かなり面白い作品が次々に登場して、見ていて楽しかった。
しかし、彼らはこういうプレゼンしょっちゅうしてるはずなのに、かなり
緊張してガチガチだった。恐らく、建築家の卵とはいえ事情を熟知している人達の前で
プレゼンするのはかなりのプレッシャーだったんだろう(笑)
しかしこのプレゼン、自分は根本的に勘違いしていたのだが、実際に建てようとしている
建物のモデルなどはほとんど提案されない。むしろそのチームの空間デザインに対する
哲学や理念、コンセプト的なものがほとんどで、それに共感をしてもらうことが目的だった。
過去のプロジェクトの披露は、そういう哲学が実際にどう建物に反映されているかを
見せるために使われる。
まあよく考えれば、まだ彼らは仕事を受注した訳ではないので大掛かりなモデルを作ったり
デザインしたりするのに時間・お金を割けないのだろう。
建築物たるものは人と空間の関わりにおいてどのような役割を果たすべきか、みたいな
哲学的な話ややたらポエティックな表現が多かったのでちょっと拍子抜けした。
けど、自分の知り合いの範囲で考えても建築家目指す人って哲学チックな話が大好きな人多い。
でも今日のプレゼンを見て、「あ、建築家ってそういう職業なのか」と妙に納得した。
物理的な空間にどうやって概念的な物を表現するかってひたすら考えてるんだもんな。