2010/01/22

サステイナビリティ①

サステイナビリティを考える際に大事なのはストックとフローの考え方。
経済学では生産要素を土地・労働・資本という風に言うが、これは言い換えれば
Natural capital(自然資本), Human Capital(人的資本), Financial Capital(資本財)
という風に全て何らかのcapitalであると言える。

最近マインドマップのフリーソフトをダウンロードしたので試しに遊んでみた。

これらは全てストックであり、いわば元本に当たる。サステイナビリティの条件の
大事な柱が、ストック(元本)を食い潰すことなくフロー(利息)だけで生活する、という
こと。

例えばある魚のストックが一定以下に減らないような漁業や、同様に一定の
ストックを確保した林業などがサステイナブルであると言える。これをもっと
一般化すると「収奪スピードが再生産のスピードを上回ってはいけない」という
言い方になる。

理論的に言えばある魚の個体群がその数を維持する為の最低条件は、稚魚2匹が生き残って
親魚の個体数をreplaceする、ということ。これが連続して起こればその個体群の大きさは
変わらない。もちろん魚が成長する過程で他の天敵に食われたり、病気にかかったり、
それこそ人間に釣られたりして大半は生き残らないので、それを勘定に入れた上で魚は
卵を大量に産むようになった。人間は(先進国の場合)人口維持のための出生率が確か
2.2人くらいだった気がするが魚は数十万なんだろう。

人間の活動が魚の個体群維持にさほどの影響を及ぼさない範囲であった時代には、
魚にとって人間はあくまでも「天敵の中の一種」としてカウントされていて、
たまに運悪く網に捕まってしまってもそれは魚的には「想定範囲内」という感じ
だったのだろう。「想定範囲内」ということは、人間が多少釣って食べても、
しっかり次の世代が親世代と同数あるいはそれ以上の個体数を残せる、という
ことで、まさにその個体群が産み出す余剰、フロー、利息を頂戴している形になる。

しかしトロール船などで大量の魚を根こそぎ捕まえてしまえるようになった今の時代
話は別で、もはや個体群がその大きさを維持するどころか次世代のストックを産むはずの
親魚がどんどんと人間の食卓に並ぶようになってしまい、個体数は減少の一途。
これはまさに「ストックの食い潰し」そのもので、サステイナビリティの条件を満たして
いないことになる。

こういう風に見ていくと魚の乱獲、森林破壊、生物多様性の減少、石油枯渇などなど
現在あらゆる資源利用は到底サステイナブルと言える状態ではない。

石油は枯渇性資源だからしょうがないじゃないか、となるが、枯渇性資源の
利用にもサステイナビリティの条件がある。これはまた次回書こうと思う。


エコロジカル経済学の授業より
(Seminar on Ecological Economics)

2 件のコメント:

kura さんのコメント...

水産科学院に属している身としてはコメントしたくなる内容だ!!

漁業資源の特徴が分かりやすくレビューされてて、いい復習になった(笑)

一言で漁業資源の枯渇と言っても、それが果たして乱獲が原因か、気候変動が原因か、そもそも気候変動って言ってもレジームシフトのようなものか、それとも近年の温暖化問題絡みなのか・・・

そもそもその魚の生活史は??

生息適水温は??

漁業が個体群にどの程度インパクトを与えているのか??気候変動によるインパクトは??



結局、漁業管理で何が大事かと言ったら、その種毎の生態をしっかり把握することだと思う。
どういう生活史で、どんな系群があって、食物網はどうなっているのか・・・??

管理以前に一番大事なところがあると思う・・・っていう資源生態学をかじっているものの遠吠えでした(^_^;)

長文失礼!!

yk さんのコメント...

パッと思い浮かんだ例がたまたま
魚だったんだけど、kuraがコメント
くれるかな~とは思ったよ(笑)

まさに生態学なんかやってる人の
基礎データっていうのが資源管理の
基本っていうかそれがなきゃ管理も
クソもないよね。
同感です!

ただ、全部解明されるまで待ってる
うちに絶滅されちゃ困るから
分かってる範囲で賢い利用を図る努力は怠るべきではなくて、両方同時に
進めていくべきだよね。

魚に限らず鳥もそうだし、kuraなんかがやってる定点観測的な取組みは
それだけ見ると地味だけど大事な
データになるよね。

頑張れ~!