お天気シリーズ第三弾。
エキストリームな気象現象好き、という話を書きましたが、
まさに気候変動はそういう現象をもたらすものだと思います。
(別に気候変動が起こって欲しい、と言ってるワケじゃないです笑)
"The World is Flat(フラット化する世界)"の著者として有名な
Thomas Friedman氏の最新作"Hot,flat and crowded(グリーン革命)"
を今読みかけですが、彼もこの本の中で「Global Warming(地球温暖化)」
という言葉は世界が徐々に暖かくなってくる、という肯定的ともとれる
表現で、誤解を招くと指摘しています。
(「2月にゴルフできるぜ!」というニュアンスで捉える人が多い、という例を挙げていました)
実際は局所的な大雨や大雪、あるいは異常高温や異常低温なんかが多発し、今までの
パターンでは予測できなかったような極端な天気があちこちで起こる、という
ようなイメージの方が正しく、言い換えるとすれば「Global Weirding(地球奇妙化(?))」
と表現した方が正確だ、とFriedmanは書いています。ただ、アカデミックな世界では
「Climate Change(気候変動)」が最も一般的です。
僕も地球温暖化という言葉は久しく使っていないし、意図的に言わないように意識しています。
ただ、気候変動というと気候は常に歴史的に変動してきたじゃないか、と
言われるかもしれませんが、それに関してもFriedmanはClimate Variabilityと
Climate Changeという異なる概念を使ってうまく説明しています。
Variabilityはいわばある一定範囲内での「バラツキ」で、Changeは根本的な
気候システムの「変動」、つまり異なる平衡状態に移ってしまうような大きな
システム的変化を意味します。
この文脈で、近年よく聞く冬の欧州/米国東海岸の大寒波について考えていて、
学部時代気候システムの授業で習った大西洋の熱塩循環(Thermohaline Circulation)
のことを思い出した。この授業の期末ペーパーとして書いたトピックでもあります。
熱塩循環とは、メキシコ湾から北大西洋に暖かい海水を送るポンプのような役割を
果たしている海流のこと。海流の北端であるグリーンランド近海で冷やされた塩分濃度の高い
海水がその重みで海底に沈みこむことによってベルトコンベアのような海流全体を動かす
エンジンになっている、というもの凄いスケールの大きな話です。
ところが最近そのグリーンランドでは氷床の溶解が進み、近海の塩分濃度が下がり、
結果的に海流を動かすエンジンが弱まり、メキシコ湾からの暖かい海水が北大西洋に
届きにくくなっているのではないか?と言われています。
この海流が止まると、北大西洋に面する欧州や米国東海岸は一気に寒冷化する、
というシナリオがあり、ひと昔話題になった『デイ・アフター・トゥモロー』
という映画のもととなった概念です。あの映画はあまりに極端だとしても、
どうやら気候モデルの研究者の間では、熱塩循環停止→寒冷化というシナリオ
はSFでもなく、現実に起こり得る、というコンセンサスがあり、気温上昇に
対するネガティブ・フィードバックの典型例のようです。
実際、8000年前に起こった「ヤンガー・ドライアス」というプチ氷河期も
コイツのせいだと言われています(海底地層など様々な異なる研究結果を引っ張って
来て、この説は有力である、というレポートを書きました)。
最近の欧州/米国東海岸の寒波(今年だけじゃなく去年か一昨年もあった)が
この熱塩循環のせいだ、と言うにはあまりに早すぎるしデータ不足でしょうが
後から振り返れば・・・ということになる可能性は無きにしてもあらず、という
気はします。そのうちそういう論文が出るかもしれませんね。既に出ていたら
教えて下さい。
雨の小道
7 年前
5 件のコメント:
うちの研究室は海洋&気候でまさにそういうことをやっている人もいるよ。ただ熱塩循環には諸説あるからどれが本当だろうね、っていうのがうちのスタンス。
俺も古館さんが「これも地球温暖化の影響ですかね」っていうコメント大嫌い。
友人たちのMLでちょうど「地球温暖化」が話題になっていたので、引用紹介させてもらいました。事後報告ですが、ご承諾くだされ。
本筋とは何の関係もないのだが、weirdingなんて言葉は、アリなんですか?辞書でひいてもweirdは形容詞しか載ってない。わざとweirdな使い方をしている一種のジョーク?日本語で言えば「ブキミ化」みたいな・・
>いわの
そっか、物理ん中でも確かそういう
研究室だったよね!
ふむふむ、まあ確かに気候システム
自体超複雑系だからいくらモデルを
作ってもそれはモデルに過ぎないから
現実に起こるかは誰も分からないよね。
俺も古舘さんに限らず何でも温暖化の
せいにする人は嫌だなあ。
「環境に優しい」
「エコ」
この辺まとめて全部だいぶひどい
使われ方されてるよね。
>QD
どうぞ~。
weirdingなんて言葉はナシです。
彼の造語です。でも英語ってこういう
のかなり頻繁に出てくるし日常会話
でもよく使う。
まさに「ブキミ化」という言葉は
辞書にないけど「~化」ってすれば
何でも一応意味は通じるのと同じで
"~ing"を使うよ。
他には"~ish"っていうのが
「~くらい」という意味で使われる。
例えば「2時くらいに会おうか?」
と言う時に"Do you wanna meet
2ish?"と言ったり。
weirdingのニュアンスは、思っていたとおりだった。greeningなんてのも最初はそういした造語だろうな。ishは知らんかった。書き言葉でも出てくる?
ishはさすがに口語だけで、
正式な書き言葉では見たこと
ありましぇん。
コメントを投稿