2010/05/21

今回のOil Spillはオバマにとっての9.11

久しぶりの更新です。

メキシコ湾で起こったBP社による石油掘削施設爆発&原油流出事故から
早くも1ヵ月が経過した。
1日に5000バレル(約80万リットル)以上の原油が流出しているとのことなので
周辺の生態系や、養殖業で生計を立てている漁民への影響は計り知れない。
(油汚染の鳥類への影響に関しては知り合いが結構関わっています。
http://blog.livedoor.jp/abura060303/に詳しい。)


事故が起こった直後、漁業コミュニティからの訴訟を恐れて、彼らを清掃部隊として
雇う代わりに「現場で見たことは秘密にする」「BP社を訴えない」という契約を
させていることがメディアで非難された。

今回の事故により、前大統領選挙で共和党ペイリンが何度も繰り返していた
"Drill Baby Drill!"のOffshore drilling(海底石油掘削)が説得力を失うこと
だろうと思う。しかし、それに対してグリーンニューディール政策を掲げ再生可能
エネルギー開発を強く訴えていたオバマ大統領は今回の事故を足掛かりに、国として
もっと大きな方向転換をするべきだった、好機を逸した、と主張する記事を以下にご紹介。

Obama and the Oil Spill 5/19

『The World is Flat』等で有名なThomas FriedmanのNY Timesのコラム。

要約&解釈としては

・今回のoil spillはオバマにとってのハリケーンカトリーナである、という
論調が見られる。しかし、カトリーナの際問題となったのは、ブッシュ政権の
対応スピードの遅さだった。その点今回のオバマの対応は非常に迅速だった。
そこが問題なのではない。

・むしろ今回のoil spillでオバマ大統領がブッシュ大統領と構造的に同じ過ちを犯して
いるとすれば、その比較対象は9.11である。

・ブッシュ大統領が2001年9月12日の朝にガロン当たり$1の「愛国税(patriot tax)」
と称したガソリン税を提案していたなら多くのアメリカ国民がそれに同意しただろう。
しかし、ブッシュ大統領が実際採った行動は1.戦争と2.自国製品を買うことの奨励、だった。
結果的にどれだけの石油を消費し、対戦相手である敵国を潤したことか。

・今回の「環境版9.11(oil spill)」は石油依存という根本的な問題の解決を促す
格好の機会だったにも関わらず、オバマ大統領はBP社を厳しく叩く、という
対症療法的対策しか行っていない(“Think small and carry a big stick.”)

・新たな「炭素税」や「ガソリン税」を課す、というのは保険制度改革でかなり
体力を消耗した民主党にとって、共和党に新たな攻撃材料を提供してしまう、という
怖れがある。それが消極的な対応の大きな原因。現在Kerry,Liebman両議員が提案している
新エネルギー法案に対して熱意が欠けるのも、これが原因。



著書の『Hot, Flat and Crowded(邦訳:グリーンな革命)』での9.11に関する主張を
oil spillにも当てはめた形。フリードマン氏の文章はリズムがあり、説得力
もあって割と好きですが、アメリカイケイケ的な典型的アメリカ人、という印象を
受ける。。

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